2017年3月31日金曜日

2017.3.31 プロの仕事にしか興味はないし・ナビ派展

昨日はトオイダイスケさんのライブに行ったのだが、ふたりで1時間ずつというやつで、前半の人が酷すぎて危うく野次を飛ばすところだった。ジャズピアノを教えているというが作曲が専門だと言う。どうやらアメリカの大学に行ったことが人生の頂点だったようだ。手が動かないから長い話をすると言う。長い話がまったく面白くないし同じことを何度も言う。ジャズは飲みながらやってもいいからビールは6杯目だと言う。演奏がうまけりゃそりゃ何杯飲んだってかまわないが少なくともジャズには聴こえない、発表会レベルだったので、みんな辟易していた。ジャズはこういうのもアリ、敷居が低いとわかってもらえれば嬉しいです、と言っていたが、素人だと思ってなめないでください。素人ですが鍵盤のタッチひとつでプロかどうかくらいわかるよ。
トオイダイスケは最高。1曲目でもうさきほどのアレを忘れさせてくれた。トオイさんの演奏はけっこうパワーがあって官能的。私はご飯と芸術に関しては、いいものにしか金を払いたくない。

今日は三菱一号館美術館で「オルセーのナビ派展」を見た。期待通りかなりいい展示で、というか私はこの美術館が好きなので、本来ならば夫とのデートで行くつもりだったのだが、夫が忙しいからいつになるかわからないと思って、まぁ美術館は平日が吉だし、よかった。
特に気に入ったのはセリュジエ「タリスマン、愛の森を流れるアヴェン川」、マイヨール「女性の横顔」で、ボナールの作品がどれもよかった(たしかあのヌードもボナールだったと思う、あれもよかった)。途中肖像画の章で「ナビ派の画家たちは、作品の内部に内面性というフィクションを提示することで、親密さの詩情というものを作り上げたのである」ということが書かれており、この説明を書いた人いいなと思った。

本当なら今日は俳句文学館で調べ物をするはずだったけれど昨日昼寝で寝違えた首が痛くて調べ物ができる気分でなく美術館に行ったわけだが、ふつうの職業ならそういうことは許されないわけで、それを思って東京駅で泣いていた。春になれば、風邪が治れば、バリバリ仕事ができるような気がしていたがそんなことはない。自分はバリバリ仕事ができたりすることはもう一生ない、それを忘れずにいなければ、ふつうにできないことに毎日泣いたりして好きな人に迷惑をかけ続けることになる。仕事はいかに調子がよくても一日せいぜい4時間が限度であり、できない日はほとんどできないけれど、そんな人間でも生存することは許されているというのを毎日自分に言い聞かせ続けなければならない。

昨日の午後くらいから夫に何かプレゼントをしたいという気持ちが強まり、昨日は柏の高島屋や今日は東京駅付近でいろいろ見てみるのだが、これというものは見つからなかった。東京駅構内の日本百貨店にも真工藝のぬいぐるみが置いてあることを発見して少し嬉しくなった。

帰宅して買い物に行き、ボルドーの白ワインを飲みながら苺とせとか(柑橘)を食べている。近所の公園の桜が咲き始めていて、この大したことのない公園で夫とよなよなエールでも飲みながら小一時間花見ができたらどんなに幸せだろうかと思った。明日明後日ぐわっと咲けばそれも叶うかもしれない。

2017年3月30日木曜日

2017.3.30 植本一子『かなわない』と書かないでどうするんだの話

4月になったら植本一子さんの天然スタジオで写真を撮ってもらうことにしたので、順序が逆のようだが、植本一子『かなわない』を購入し、二段組になっていないところ(つまりは日記でないところ)を読んだ。二段組は私は目の都合で読めない(視野に上下段ともに入ってしまって目がすべるというか)が、一段組のところだけでも読んだ価値があった。少し二段組の日記も読んだ。



たまに出るラジオの番組HPをリニューアルするから新しい近影がほしいと言われたので、ユリちゃんが前撮ってもらった人にお願いしようと思って、ユリちゃんに電話してみたのだった。そのカメラマンは南阿沙美さんというのだが、3月にやる予定だった撮影イベントはなくなってしまったらしく、「それなら植本一子さんの天然スタジオは?」とユリちゃんが言ったので調べてみてお願いすることにした。

なぜか植本一子さんというのはおばさんでいい暮らしをしていると思い込んでいて、『かなわない』は素朴な生活スタイルを説く本だと思い込んで敬遠していて(すべては本の表紙の印象だと思う)、ユリちゃんに言われるまで植本さんが同年代のカメラマンだと知らなかった。『かなわない』にはユリちゃんが働いていた阿佐ヶ谷の小さな飲み屋で別の日を担当していたゴロゥちゃんが出てくるよ、と聞いて、懐かしくなって買った。

ユリちゃんに子供ができてその飲み屋をやめるというとき、代わりとして私もその飲み屋で働いたことがあったのだが、ようやく一人で店員として立ったその日に来た泥酔客が店で二度も吐いて、嘔吐恐怖症の私はすっかり参ってしまいその日でやめてしまった。そのとき店にちょうど客で来ていたのがゴロゥちゃんで、すべての始末をゴロゥちゃんがやってくれた。だからゴロゥちゃんは恩人で、そんなこともずっと忘れていたけれど思い出して、だからというわけでもないが『かなわない』を読もうと思った。ゴロゥちゃんは日記部分に出てくるのであまりまだその部分は読めていないが、一箇所ゴロゥちゃんの家にバスで行くというところは見つけた。

『かなわない』を読むと、好きな人のことを書かないでどうするんだ、という気持ちになった。私はもう結婚したから書かないことにしようといていた。でもそんなのはずるだと思った。いくらでも書くべきだと思った。いろいろな好きな人のことを、それぞれ書くべきだと思った。

私が書きたくないと思ったのは家庭的でありたくないことと同義だった。幸せな家庭の主婦という存在にまったく興味がないからだ。私がいい奥さんであったりするのは私自身一番気味が悪い。そしてたとえばこういうことを私に書かないほうがいいと思わせたのは夫への配慮だった。へたなことを書いて夫のまわりの人に知れて夫に迷惑をかけたくなかった。いい奥さんをもらったことにしておきたかった。急な結婚にあわせてインタビュー記事も削除してもらった。夫のほうはとくに気にしていないようだったが、うちの親が気にした。

夫は結婚した途端仕事が忙しい時期に入った。朝は7時台に出発し帰りは0時を過ぎる。終電がなくなってタクシーで帰ってくることもある。可能性は理解していたがいざそうなると呆然とした。うちの父親は母より遅く家を出て母より早く帰宅するような職種だったから、結婚すれば夫と毎晩飯を食うのがふつうのことだと思っていた。
一人暮らしのときは新宿の近くに住んでいたからいくらでも飲みに行ったけれど、今の家は最寄駅の柏まで歩いて15分かかるから、夕方一度家に帰ってしまうとそのあと誰かを誘ってどこかで飲んだりはできない。夕方18時ごろから夕飯を食べてしまうと6時間くらい暇になってしまう。友達とメッセージをしたりしてどうにかやり過ごす毎日。
昨日ももちろん夜暇だったのでLINE袋回しなるものに参加した。黒岩とシシオガイとりさこちゃんと私で、各2題で3分ずつ。28句できた。

  ラーメン「大陸」缶のコーンをバターで焼き

これから私は夜のその時間に仕事をすることにする。私はどんなに忙しくても一日に仕事に集中できる時間は3~4時間が限度だから、それを夜にもってくることにするのだ。日中は仕事をせずに家事をしたりブログを書いたり散歩したりして過ごせばいい(と、今これを書いているけれど今日は夜ライブに行くので今日に関しては本当は今仕事をすべきである)。

はやく引っ越したいけれどこう夫が忙しいと引っ越しもできないしとにかく結婚式を終わらせないことには何も始まらない。結婚式は鹿児島でやるので前日年休をとってもらい昼の飛行機で鹿児島にむかうことにしてあるけれど本当に年休がとれるのだろうか。早割で飛行機をとってあるから時間変更がきかない、変更するなら高いお金がかかってしまう、とこの期に及んで小さいことを考えてしまう自分が情けない、でも前日くらいはゆっくりしたいと思うくらいのことは許してほしい。

というようなことを、今書かないでどうするんだ。

2017年3月29日水曜日

2017.3.29 アンソロの話3と近況

この冬は風邪ひかなかったなぁなどと言っていたらひどい風邪をひきました。リンパが腫れて37℃〜38℃を行き来してました。が、ようやく治ろうとしております。なんか人相まで変わった気がします。気のせいか。連鎖的に花粉症もいらっしゃいました。

結婚式が迫っていて、卓上のお名前カードを買ったりプリンタのインクを買ったりしています。親族10人だけの挙式・食事会なので披露宴はしないのですが、披露宴やるならまじで大変だな。風邪とかひいてる場合じゃない。

さて、随分間があきましたが、アンソロの話。公募の選は2月後半から3月のはじめに終えました。発表は5月中旬になるかなと思います。5人の方。当人への通知は4月末頃にいくかもしれません。

今はひたすら句の並べ替え。そして文章を書き始めました。
あ、山田航さんが熱い文章を書いてた部分が、「佐藤とスペシャルゲストの対談」になる方と、「佐藤の小論という名の短いエッセイ」になる方がいらっしゃいます。その、文章です。

一句独立! 作品は作者と切り離して考えよう! というのは、今回はやめて、作者のことを書くことにする所存です。本当は作品の技術的なところに触れたいんですが、紙幅の都合で、俳句を知らない方が読んでも面白いように技術の話がしにくいのである。技術の話は内輪というかオタクの話に見えそうになるのである(私の文章の技術がないだけかもしれないが残念ながらしょうがない)。そういうのは対談で語ることにしようと思います。

そういえば、NHKカルチャーの第1期が終わりました。反省も多々あるんですが毎度面白い部分があるようにはできたと思います。575以外のリズムの作り方、季語の属性、何が俳句になるか、句集を読む、など。第2期は似たようなことをもうちょっと筋道立ててシステマティックにやりたいです。受講者募集中です。

2017年3月1日水曜日

2017.3.1 3月になったこと、岡村知昭『然るべく』(人間社)より8句

3月になった。最近は調子の悪い日が続いて辛い。どうにか気分を上げて仕事をして、仕事が終わるとまた調子が悪い。耐えるしかない。

季節的な問題と環境の変化、仕事の局面など、今たまたま調子が悪い時期なのだ、この10年の調子の悪かった局面を考えればだいぶマシになっているじゃないか、と俯瞰して考えれば多少楽になるものの、なかなかふだんの値がマイナスから浮上しないので吠えたりしながら耐えている。

尾形亀之助は読まねばと前から思っていてようやく買えてよかった。俳句書いている若い人にはぜひ読んでほしい。

話は変わって、岡村知昭『然るべく』(人間社)より8句。

うつむくやチューリップ農協に咲く
軽症の父を擁する田植かな
初鰹この人握手会帰り
しろき蛾よ幕府よみがえらぬすぐには
眉剃ってひよこめぐりのみんなかな
銃後ではあたまがよくてバター買う
梅擬ひなたはなにもしておらぬ
晩鐘よ即戦力のはなびらよ

「農協」「軽症」「握手会」「即戦力」などの言葉がナチュラルに入ってきていて面白い。さらに、農協のチューリップや握手会帰りの人というのは、ただのチューリップやふつうの人なのにただのチューリップやふつうの人でないのがいい。「眉剃って」「銃後」「梅擬」「晩鐘」の句は頭の悪そうさが元気で気持ちよい(←褒めている)と思った。