2022年12月31日土曜日

メキシコの海の写真が送られて来た(2022年のまとめ)

今朝、海の写真が送られてきた。年末年始はメキシコで過ごすと言っていた、ヒューストン大学の院生で詩人のウェイジアからだった。
3ヶ月ちょっと前はアメリカにいたことなどまるでなかったことのように日本での暮しに戻った私だが、「How are you recently?」とLINEが来ると、アメリカにいたのは夢じゃなかったのだなと思う。ヨセミテも、ナパも、テキサスも、グランドキャニオンも、シカゴも、今年のことか。信じられない。新宿に行くみたいな気分で、サンフランシスコに行ってただなんて。

2021年10月はじめから2022年9月おわりまで、ちょうど1年間のカリフォルニア生活は、本当はつらいことが多かった。日本に帰ってこれて、心底よかった。でも、アメリカにいた日々がなかったことにならないように、その期間のまとめをしておこうと思う。

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10月 入国。IKEAでベッドを購入するところから。はじめはネットもつながらず大変だった。ランゲージエクスチェンジのサイトを使い、弁護士のショーン、日本オタクのスコット、院生のエマちゃんに会う。

11月 語学学校に通い始める。200分週5回×10週間。語学学校の子たちとサンフランシスコで火鍋を食べたことを契機に、英語はできないが友達がたくさんできる。
妹の後輩でバークレーに住んでいるカレンちゃん宅にお邪魔し、サンクスギビングデー。七面鳥を食べる。

12月 タカシとワイナリーへ、バスツアー。ソノマとナパの間の有名でないところ。
クリスマス、タカシとサンディエゴ旅行。サファリと動物園、UCサンディエゴを見学。行きの飛行機は欠航になり、帰りはBARTが止まっていた。

1月 年末年始はまたコロナが流行り、語学学校にただ一人の生徒となる。その後、マンツーマンレッスンに切り替え。50分週1回×10週間。

2月 英語のやる気をなくし、仕事もなく、ビールを飲んだり日本の友達とZoomをしたりして過ごす。
バークレーハーフマラソンの10kmコースを、開催9日前に知り、急遽参加。完走。54分19秒。

3月 暇なのでランニングをする。
俳人の斉藤志歩さんの友人でUCBの院生のアオイくんのはからいで、UCBの日本語会話グループに参加。屋上での持ち寄りパーティなどにも呼んでもらう。
タカシ職場Bの大部分の方が帰国されるため、オークランド動物園やシェパニーズのカフェに行った。

4月 タカシ、ようやくオークランドの職場Aに行けるようになる。
ボイシ州立大学へ調査に行くタカシに伴いアイダホ州ボイシへ。美しく穏やかな街。
O田さんとHAIMライブ@グリークシアター。
O田さん夫妻の車に乗せてもらって4人でヨセミテへ。感動。出国前の目標が「ナパとヨセミテに行く」だったため、目標をほとんどクリア。感謝。

5月 語学学校、アフタヌーンクラスに変更。100分週2→途中から週4×8週間。アクティビティとしてアンディ先生とランニングをする。
日本語会話グループの生徒数人から個別に話を聞き、UCBの日本語コースの近野先生を紹介してもらってお話を聞く。
語学学校がスポンサーもしているベイエリアブックフェスティバル、バークレーで2日間開催。詩人・翻訳者のフォレスト・ガンダーさんとお会いする。
子規記念博物館で俳句の翻訳グループの指導をしているルース先生(カレンちゃんのお母さん)とLINE通話で俳句の翻訳について話を聞く。

6月 語学学校を修了する。誕生日会を兼ねて友人たちを呼んで飲み会@ジュピター。
タカシとタカシの同僚のトッドさんと、ジャイアンツVSドジャース@オラクルパーク。
俳人で通訳の青柳フェイさんにお会いし、俳句の翻訳について話を聞く@サンフランシスコ。
タカシとサンノゼ日帰り旅行。
タカシとともにWORDLE、太鼓の達人とテトリスにハマる。

7月 タカシとサンフランシスコ動物園。
ナパバレーライターズカンファレンス。5泊6日!。詩人の先生の講演を聴き、詩の翻訳ワークショップに参加。ナパを観光し、毎晩地元のワインを飲んだ。行く前は不安で鬱になっていたが、たくさんの友達ができ、人生における一大イベントとなった。上海出身のウェイジアくんと仲良くなる。

8月 UTサンアントニオ・オースティンへ調査に行くタカシに伴いテキサス旅行。とくにオースティンでのライブを聴いた3夜は忘れがたい。スタンフォード大学にも同行。
Haiku Poets of Northen Californiaでプレゼン。日英での俳句朗読が好評で、翻訳をしてくださったフェイさん他に感謝。
ラスベガスのホテルを朝4時台に出発する1泊2日のグランドキャニオンパッケージツアーに参加。ハードな行程ながら自然に圧倒される。カジノはせず。

9月 2人でコロナに感染。風邪程度、自宅待機で治る。ポール・ワツキーさん、フェイさんとZoomでお話。UCLA、イリノイ大学へ調査に行くタカシに伴い、ロサンゼルス・シカゴ旅行。ウィートン大学で野中美峰先生にお会いし、シカゴ美術館で作品に圧倒される。ナパで知り合ったジュディ先生の授業にお邪魔し、プレゼンと朗読をさせてもらう。お世話になったみんなと飲んで、バタバタと帰国。

帰国後

10月 文学フリマ福岡。伊万里で焼鳥を食べたり、博多で焼鳥を食べたり、酒を飲んだり、酒を飲んだりした。このために同人誌「焼鳥」をつくった甲斐があった。翌週は灘校土曜講座。自分にとっても季語について考える契機となった。

11月 文学フリマ東京。「翻車魚」vol.6を売る。仕事を全然していなかったような気がするが(実際あまりしていない)、自分はずっと「焼鳥」と「翻車魚」をつくっていたらしい。10月からとにかくいろんな友人と飲みまくった。虫歯治療をしたらかぶせものがうまくいかず何度も取れて疲弊。テレビの仕事も大変だった。

12月 来年3月にハーフマラソンに出場することに決め、それに向けて本気でランニングを開始する(が、寒いのでサボりがち)。連載仕事の関係で星のや東京に宿泊。年末、相模原ぶらっと旅。タカラヅカ スカイステージ(宝塚専門チャンネル)ばかり見て過ごした。

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●通年でやっていたこと
・翻車魚ウェブ(同人誌のサイト・月2回)
・「鏡」寄稿(同人誌・季刊)
・悟空の会(Zoom句会・月1回)
・ランゲージエクスチェンジ(月2〜4回程度)
・Zoomお悩み相談、飲み(日本の昼はアメリカの夜)
・なんらかの飲み会(セッティングし続けていた)

●アメリカにいる間にした仕事
・遠山陽子『三橋敏雄を読む』編集
・『遠山陽子俳句集成』企画協力(第37回詩歌文学館賞俳句部門・第21回俳句四季大賞)
・佐藤智子句集『ぜんぶ残して湖へ』(左右社)企画協力、週刊俳句特集企画
・本を味わうハーブティーネーミング3句
・「俳壇」12月号10句
・「りぼん」「ほわころくらぶ」コーナー俳句 監修
・紀伊國屋書店国分寺店選書フェアPOP(池田澄子著『本当は逢いたし』)
・「me and you」 5句
・月刊『土木技術』「俳句と土木」監修
・Edge 「No.107 無数の声に紛れよ 歌人・山田航」レビュー
・『俳句を遊べ!』(小学館)電子書籍化
・「俳句界」4月号エッセイ「私が好きな二句一章の句」
・「俳句界」6月号エッセイ「海外詠の魅力」
・「俳壇」7月号エッセイ「句集よもやま話」
・俳句以外を書く人のための句会(2回)
・京都精華大学 大森静佳先生クラスのゲスト講師(Zoom)
・青山ブックセンター この夏おすすめする1冊(原成吉著『アメリカ現代詩入門―エズラ・パウンドからボブ・ディランまで』)
・「現代短歌」エッセイ「私を変えた批評」
・Haiku Poets of Northern Californiaにて講演
・ドミニカン大学カリフォルニア校 ジュディ先生のクラスでプレゼン
・斉藤志歩句集『水と茶』(左右社)企画協力
・俳句個別指導、個別相談(Zoom、手紙・月1〜3回程度、通年)

●同人活動
・「焼鳥」(犬塚堯研究、中邨政也・がつつさんと。10月福岡文フリから販売)
・「翻車魚」(俳句。高山れおな・関悦史と。6号は11月東京文フリから販売)
・「Winged Unicorn」(川野芽生との川柳・短歌・俳句フリーペーパー。紀伊國屋書店国分寺店の川柳フェアにあわせて作成、今後文フリにて配布予定)
・「Pegazine 01」(佐藤編集のフリーZine。各文フリにて配布)
・「虎とバター」(2019年まで指導していた句会の同人誌。10句寄稿)

●帰国後の仕事
・「第1回ペガサス句会 in 博多」(10/21)
・灘校土曜講座(10/29)
・「眩暈 VERTIGO」(井上春生監督)のパンフレットに俳句と小文「つくり手の私たちへ」寄稿
・「俳句」12月号「水気の冬」12句

●現在進行中の仕事
・「俳句界」連載(2022年11月より4回)
・「婦人画報」星のや「暦のことば」(2023年1月号より1年)
・アンソロジー『おやすみ短歌(仮)』(実生社・枡野浩一・phaとの共編著)
『稲畑汀子俳句集成』読書会(1/22予定) etc.
・引き続き、Zoomでの個別相談・指導を承ります

●出没情報
2023年 1/15 文学フリマ京都

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実は、アメリカでのことについては別のかたちでまとめる予定だ。うまくいくかどうかは2023年にかかっている。英語は結局できないままだが、少しずつ触れる機会をつくっていきたい。短歌のアンソロジーの共編著もじわじわと進めている。短歌を読む日々である。

上記以外でよかったことは、水面下での「のん大」の活動(?)。今後も飲み過ぎには気をつけつつ、ライフワークとしての「飲酒」を、さらに自分らしいものにしていくつもりだ。

2022年、お世話になりました。2023年もよろしくお願い申し上げます。

2022年10月13日木曜日

2022.10.13 ひさしぶりに

このブログをずっと放置してしまっていましたが、無事帰国しました。帰国して、飲んだり食べたり飲んだりしています。

翻車魚ウェブには毎月俳句と散文を載せていたので、ご興味のある方はそちらをご覧いただければ。

翻車魚ウェブ(佐藤作品)


文章を書かねばならないのだが、書くクセがなくなると全然書かなくなるな。まずは毎日書くようにしようと思う。歯磨きをするみたいに書ければいいんだけど。

ここから半年くらいメインの仕事が少し俳句から離れるので、ここでは俳句と今の生活に関することを書いたりしていきたいですね。俳句のことを考えるのが少し楽しくなるといいな。

いろいろしたいことはあるんですが、まあ来年の3月くらいまではボチボチやろう。

国内旅行をたくさんしたいというのはずっとあったので、これだけは10月から始めます。

まずは文学フリマ福岡。Pegasus Booksという名前で出店します。前日に句会もやります。→ペガサス句会 in 博多

楽しみだ。

2022年4月3日日曜日

2022.4.2 忘れる/忘れない、残らない/残る

私は、素晴らしい経験をすると、これは思い出になるだろう、と思って、写真に撮る。

ふつう、素晴らしい経験をした結果、覚えているのが思い出なのだけれど、私は記憶力がとても弱く、すべて夢だったのではないか、というくらいに、あるいは、そんなことあったっけ、というくらいに、ほとんどすべてを忘れていく。写真を見返すことでしか思い出せないことが多く、写真を撮らない日はすべて、なかったものになってしまうような気がするし、実際そうなっている。だから、全部撮っておかないと全部忘れてしまう、と思う。撮っても、整理しないからどんどん溜まる。オーブンで焼いてはりついてぼろぼろになった鮭とか、別に写真としてはいらないのだけれど、そこにその一日がたしかに存在したことが愛しく思えて、削除できずにいる。そして、また今日も撮る。

(こうやって書いているのもそうだ。何か感じたからそれを表現したくて書く、のではなく、記録のために書く、のでもない。そう感じた自分のことを、自分が忘れないため。同じようなことを何度も書くことも、その期間ずっとそう思っていたことがあとからわかるように、と思えば、何度書いたっていい。焼鳥が食べられなくてつらい、とか。)


アメリカには、写ルンですと、カメラと、フィルムを持ってきている。カメラは、アメリカに来る前に毎週会っていたFredがくれた、ドイツのかんたんなカメラ「AGFA」。写ルンですは4つ持ってきて2つ使った。フィルムは、カラー・モノクロあわせて6本持ってきて今5本目。インスタントカメラもフィルムもこちらで手に入ることがわかったので、好きなときに持ち歩き、好きなときにシャッターを切る。ミラーレス一眼は持ってこなかった。ふだんはスマホのカメラで十分だと思ったので。

こちらにも現像・プリントのサービスはあるけれど、帰国してからすべて、友達が店長をやっている写真屋さんに持っていくつもり。フィルムカメラは久しぶりだったので、1本目はフィルムを取り出すときに失敗して、たぶんほとんど感光してしまっているから、ダメなのはプリントしないでくれ、とか言えるのもいい。何より、そのときの自分にとってどんな光景が大事だと思ったかのこたえを、帰国次第一年分まるごと振り返れることが楽しみだ。

撮った写真を見せたい相手も、いないではない。


私は残らないものも好きだ。音声は言葉になったとたん消えてしまうから、何度言っても、そこには今発されているその音しか存在しないのがいい。内容は覚えていたり、覚えていなかったりする。声を覚えていることもある。覚えている声に、言ってほしいことを言わせたりする。頭の中で。

[忘れる/忘れない]と[残らない/残る]。そこに意志を加えるか否か。
結局どの組み合わせも愛しい、ような気がする。

録音して持っていて、たまに聴く音声。
自分が書いたけれどもうほとんど開かない本。


アメリカに来て半年が経った。折り返し。

[sɯ]・[kʲi]・[da]・[jo]。

2022年3月17日木曜日

2022.3.16 ながめの散歩

家の中にいてもなんのやる気も出ないので、ランニングや散歩に出るようになり、体力がついてきた。今日の散歩の一連の写真をアップしてみよう。

はじめ、Downtownの方に進んだのだが、なんか気乗りせず、最近よく行く北側のゾーンへ行くことに変更。
栗鼠とモッコウバラ。

The Fountain at The Circleにのぼってきた。

Solano Ave.に出て、Peet's Coffeeでアイスコーヒーを購入。

Indian Rock Pathに入る。
そういえばIndian Rock Parkという公園があったと思い出した。そのための小径のようだ。

Indian Rock Park。岩だ。のぼっている人もいた。

さらに、近くにいくつか公園があることがわかり、行ってみることに。


Motar Rock Park。ここも岩だ。

John Hinkel Park。ここは岩じゃない。工事中だった。

その近くのてんとうむし大量発生ゾーン。

さらに、Grotto Rock Parkへ。ここも岩。

階段があるのでのぼってみることに。

Seriously, the best view ever!! サンフランシスコ見えますね。

Glad I came!!!!

というわけで、岩公園3つと工事中公園1つをめぐり、Safewayで買い物をして帰宅しました。
3時間、だらだら歩いたり立ち止まったりして、約10km。長めの散歩、いい眺め。なかなかよい散歩だったな。






 

2022年2月9日水曜日

2022.2.8 信号のない横断歩道を渡るときだけ

信号のない横断歩道は、Berkeleyにもわりとある。が、90%以上の確率で、車が止まってくれる。東京より、断然だ。

引っ越してきたころは、恐縮です、というようなかんじで、頭を下げ、小走りで渡っていた。

けれども、どうも私と夫以外、誰も頭を下げていない。あるときようやく気づいたのは、頭を下げる、お辞儀をするということ自体、日本の方法だということだった。語学学校の先生が、「日本人のおじぎの角度による謝罪レベル」をおもしろ動画として見せてくれたのもこのころだった。日本人あるあるとして、笑われるということだとすら知らなかった。

小走りも必要なかった。こちらの歩行者用信号は、赤信号に変わる前にあと何秒で赤になるかが、数字でカウントされる。日本と違って、赤になるとすぐに車が来るので、あと5秒なんてときには走って渡っていた。が、こちらの人は誰も急いでいない。残り10秒もあるのに、渡らずに待っている。たまに、堂々とゆっくり渡っている人もいる。信号がない横断歩道では、いつも、誰も急いでいない。横断歩道を小走りで渡るというのもまた、自分の自分らしさが、アメリカにいる日本人っぽさと重なっていたのであった。

聞くところによれば、車の免許の試験の際、歩行者がいたら必ず止まるように習うのだそうだ。というより、歩行者がいるのに止まらないと、罰金が課せられるらしい。私が横断歩道を渡るときに、車がみな止まってくれていたのは、やさしさや気遣いではなく、ルールだったのだ。

ならばその代わりにと、止まってくれた車の運転手に対して、手を挙げたり振ったりするようになった。これが、いいのである。運転手もみな急いでないから、手を振り返してくれたりする。笑顔なのも見える。英語ができなくて心細い朝も、運転手が笑顔で手を挙げ返してくれると、それだけで涙が出そうなほど嬉しかった。

だいたい、このあたりはいろんな人種がいるから、私がどれだけアジア人然としていたところで、はじめからゆっくり話しかけてくれたりはしない。聞き取れなくて聞き返しても、「英語がわかる人がたまたま聞こえなかった」という話し方しかしてくれない。それはもっともな話で、日本でだって、いくら外国人に見えても、ふつうの大人に、子供に話しかけるようにゆっくり話したのでは、失礼にあたるからだ。私は、多少のフレーズは言えるようになったが、親切にたくさん話しかけてくれる相手には、「あ、この人は英語できないんだ」と気づいてもらえるように、早い段階で、わざとつまりながらしゃべる、という方法をとっている。が、かんたんなフレーズが流暢に言えてしまうと会話が成立しないというのは、聞き取りや単語がダメなわりに発音はマシ、という人間にとって、自分のいいところが何もなくなるわけだからわりと屈辱で、はやく聞き取れるようになりたいのだけれど、家で英語をやらないのでそうはならない。結果、はじめての場所ではだいたいの場合、おどおどしたアジア人という様子で、お会計に並んでいる。

でも、信号のない横断歩道を渡るときの私は違う。にこやかに、「ありがとね!」というかんじで、姿勢よく、さっそうと渡る。このときだけは、このあたりの立派な住人になれた気がする。

道ですれ違う犬と赤ん坊にも、笑顔で手を振るようにしている。今のところこちらでは、笑顔で手を振れるということが、自分の最大のコミュニケーション能力なのである。

2022年2月5日土曜日

2022.2.4 立春

アメリカに来て4ヶ月が過ぎた。全滞在日程のうち3分の1が終わったということだ。店員さんに何か言われても相変わらず2,3度聞き返さないといけないが、今日はひとりで銀行に行き20ドルを小銭に両替してもらい、本屋で買い物をし図書館で本を借りてカフェで読み、スーパーで買い物をして帰宅、レストランに電話で予約をした。来た当初はすべてに怯え、スーパー以外にひとりで行けなかったことを思えば少しは進歩したといえる。とくに、飲食店にひとりで入れるようになったのはよかった。

昨日、はじめて入った小さいスーパー(まいばすけっとレベル、といえば東京の人にはわかるか)で、ペットボトルのお茶を買おうとして、いつものようにクレジットカードを出したら、レジの親切なお姉さんが店内をぐるっと指差し、しゃべった中では「チョコレート」「10ドル」「15セント」などしか聞き取れなかった。聞き返しても、「チョコレート」がなくなっただけで、聞こえたことはたいして変わらなかった。が、「10ドル以内の買い物にクレジットカードを使うと15セント手数料がかかってしまう。店内をいろいろ見て(チョコレートなどを買って)10ドル以上にしたら、クレジットカードでも手数料がいらないよ」と言ったのだ、と、わかった。そこでクレジットカードはしまい5ドル札を出して、にこやかに会計を終えた。
だいたい聞き返しても聞こえることは変わらず、そのかわりこういう、空気を読む的な「わかる」が多い。話が通じる、というのは、必ずしも、文章が聞こえる、ということではないのだなと思う。今日の銀行では40ドル両替したかったがそれは断られ、Union Bankの口座があることを確認され、20ドルなら大丈夫だったのでそうした。これも、ちゃんとは聞こえないのだが、通じた。カフェではアメリカーノを頼むとミルクはいりますか、ラテを頼むとホールミルクですかと聞かれ、名前で呼び出されるので名前を聞かれることも多く、ただそう思っていれば、一発では聞き取れなくても2回くらいで「わかる」。スーパーでは袋持ってますかとか会員ですかと聞かれるし、レストランでは途中で味はどう?と聞かれる。こういう慣習というのは暮らしの文脈だから、それを理解していれば、細かいところがわからなくてもいい。
ただ、それでいいや、と思っていても毎度「聞き取れねーな」とは思うし自分にがっかりはする。電話が一番厳しくて、電話で店を予約したのは今日が初めてだったが、英語が喋れないからゆっくり話してくれ、とお願いしたらどうにかなった。小さいテーブルしか空いてないけどいいかと聞かれたが、 OKと言った。

語学学校には11月第2週から、年末年始をはさんで10週間通った。苦手な英語を1日200分×週5というのは、本当に大変だったし、別にしゃべれるようにはなっていないが、考えることはいろいろあったのでよかった。最終週にクラスメイトがPCR検査で陽性となり、びくびくしながら翌週自分もPCR検査を受けた(陰性だった)。終わったらやっぱり勉強はあまりしなくなって、現在は週1回50分だけ遊びに行くようなもの。
しゃべれるようになりたいけれど、努力はしたくない。プライドを捨てよと言われても、よくわからない。プライドはそもそもあまりなくて、単純に学習意欲と記憶力に問題があるだけだと思う。映画やテレビを見たり小説を読んだりして楽しみながら学ぶといい、と言われても、日本語で苦手なものが英語でできるはずもない。今のところ、小学校低学年向けの学習図鑑のようなものが一番マシだ。

サンクスギビングデーは、同じくBerkeleyに住むKarenちゃん家族の家に招いてもらった。Karenちゃんはうちの妹の少し下の学年で、うちの妹と中学から大学の学部まで同じ(私とは中学と高校が同じ)。Karenちゃんのお母さまはうちの父親の同僚で、Karenちゃんの夫さんは私の知り合いの親戚、というなんともすごい縁。Karenちゃんの料理の腕前が素晴らしく、アメリカのサンクスギビングデーの、七面鳥の丸焼きをはじめとする伝統的なおいしいご飯をたらふく食べさせていただいた。

クリスマスはサンディエゴに行った。乗るはずの飛行機がキャンセルになったというメッセージが来ていたことに夫が気づかず、キャンセル待ちをして空港で6時間以上過ごすという、ある程度たいへんな目に遭ったが、2日間にわたってサファリと動物園を楽しませてもらい、クリスマスディナーにルームサービスという贅沢もでき、夫には感謝している。オーストラリア以外ではここしかいない、というカモノハシに会うことができたのもよかった。年末年始は日本食スーパーで餅やかまぼこ、日本酒などを買い、ささやかに過ごした。

1月はアパートの屋根の工事による騒音に悩まされ、工事の影響でWi-Fiが繋がらなくなったのが苦痛だった。毎日図書館に通ってフリーWi-Fiをむさぼった。アパートはボロい。半地下になっているところに納屋のような部屋があって、そこに歴代の粗大ゴミなどが置いてあり、洗濯機と乾燥機がひとつずつある。館内は熱湯が回ってくるタイプの一斉暖房装置で、そのおおもとのタンクのようなものもそこの奥にある。その部屋はたまにガスくさいのがこわい。洗濯機は少し壊れているらしく、使えないモードがあり、赤字で注意書きが貼ってある。たまに、前使った人が取り込み忘れた靴下を持ち帰ってきてしまうこともある。
我々の部屋の正面に住んでいるのが管理人を任された若者で、犬を飼っていて、友達がよく遊びにきて、声がよく聞こえる。上の階の人は、口論をしているときと、うまいギターの弾き語りが聞こえるときがある。Amazonなどで届いた荷物は、部屋の前まで持ってきてくれてあったり、エントランスの台に置いてあったり、外に置いてあったりして統一感がない。こういった暮らしは、言ってみれば寮に近い。まぁしかし、天災や事件などがなければ、あと8ヶ月は暮らせるかなというところか。日本からの贈り物や郵便物がちゃんと届いているのはありがたい。

体重は4ヶ月で約2kg増えた。このペースで1年だとあと4kg増えることになるが、それは避けたい。料理は日本にいたころ同様とくにやりたくはならず、とはいえ外食は高いので(ウーバーや食材も高いが)家で食べていて、惣菜や冷凍食品なども思いのほかおいしいものの、やはりプロの料理好きな自分はじゅうぶんに楽しめないでいる。そんななか、オートミールはうまい。オートミールが好きでない人は、オートミールの食べ方を知らないだけか、ほかの料理が上手かどちらかだと思う。Twitterでも書いたが、オートミールはSTOCK(鶏のストレート出汁)か前日つくったスープなどに入れて煮て、チーズや卵を入れて黒胡椒をかければいいのである。または、牛乳にバナナとともに入れて電子レンジで長めにチンし、蜂蜜をかければよい。ベーグルにクリームチーズとチェダーのスライスチーズ、というのも飽きない。チーズとヨーグルトは毎日食べていい食べ物である。
ツイッターやインスタグラムをご覧くださっている方には酒ばかり飲んでいるように見えるかもしれないが、缶ビール0.5~1本+ワイン1~2杯程度をコンスタントに飲んでいるだけで、日本にいたころとほとんど変わりなし。酒だけは日本と同じかこちらの方が安い。マイクロブリュワリーで飲むナマのHazy IPAは最高だ。最近は黒ビールのうまさにも気付いてしまった。近くのワイナリー、ソノマとナパの間のワイナリーには行ったが、これぞというワインには、まだ出会っていない。

ほかにもいろいろ書きたいことはあるが、先週末ついに野生の鹿と七面鳥を見ることができたので、4ヶ月の内容にはそこそこ満足している。3回目のワクチン接種も終わったし、昨日は大変なことになっていた白髪も染めることができて(日本人の美容師さん)、ひといきついた。目標や計画などは立てるだけ立ててなにも達成されず、オススメを聞いても試すのは飲食と音楽だけで人間に進歩がないが、人間というのは変わらないものなので、せめて自分がだらだらしているのを許してやる心の余裕くらいは持ちたいものだ。

とにかくみんなには健康でいてほしい。

2022年1月8日土曜日

Hot Haiku and Cool Haiku  Ayaka Satō #haiku

There is a wide variety of haiku in the Japanese modern haiku scene. There are not only beautiful haikus but also funky, scary, serious, interesting and cute haikus etc.
Today, I’ll share two haikus. One of them is a “hot” haiku and other is a “cool” haiku.

 "hot" in Japanese means passionate or energetic. Some of hot haikus have amazing vitality and energy. 

Kusatao Nakamura is one of the "hot" haijin (haiku writer) in modern haiku. And his most famous haiku is this. 

万緑の中や吾子の歯生えそむる  中村草田男(1901-1983) 
banryoku no naka ya ako no ha hae somuru    Kusatao Nakamura 

In the greenery of the lush trees 
My child's teeth began to grow  

"Banryoku" translates directly ten thousands of green, that means a lot of green. The powerful sound of “B” is also impressive. Surrounded by greenery, the teeth that have begun to grow are white. The contrast of green and white is beautiful. And the child has a great future. Filled with the power of nature and child and the love of parents, this haiku is full of life. So, this is “hot” haiku. 
In fact the achievement of this haiku made "banryoku" to the seasonal word! So, this is the first haiku that includes the word “banryoku” as a seasonal word of summer. 

In contrast, there are “cool” haikus. Cool in Japanese means also cool in English(cold/smart). And cool haikus are not intrusive.

青葉風静まりに葉の遅れけり  相子智恵(1976- )
aobakaze shizumari ni ha no okurekeri   Chie Aiko 

Wind through the green leavesー 
The silence comes 
Leaves lagging behind it  

"Aoba" means green leaves, a seasonal word of summer. So, this haiku’s season is almost same to Kusatao’s haiku. But this haiku doesn’t have any person and author’s enthusiasm. There are only leaves and wind. The wind leaves and the leaves stop swaying after the silence. The author found that and sketched the scene in words, not including her thoughts. The great thing about this haiku is that she just looked closely and described it with her verbal skills. So, this is a good example of "cool" haiku. 
Chie Aiko is a current haiku poet, and she has just published the first book of her haiku collection. Check it!→ "Koō"

I like both of them. What do you think?

★= translated by Ayaka Satō